春学期の早稲田大学大学院国際コミュニケーション研究科のすべての授業が終わりました。最終回「Peace Communication」をテーマに、対象者を定めて、自由な発想のもとにオリジナルの教育プログラムを創るという課題のもと、グループごとに各々のプロジェクトが発表されました。平和学・紛争解決学において、そして、修士論文に向かっている大学院という場において、どれだけ実際に身体をつかって、私たちの身体のこと 心のこと 感情のこと 人間性のこと 触れ合いのことを 学び合うことができるか、これが この場で シアターワークに与えられた役割です。

”たとえば、Theatre for Peace and Conflict Resolutionは、世界中の多くの優れた系譜に支えられながら、今の社会や世界の現状をふまえて、新たに開発しているプログラムです。シアターワークは、皆さんと出会ってゆくために、社会との繋がりを築いてゆくために、僕が自分自身で選んだ人生の表現の一つです。社会への 僕なりの一つの提案です。ぜひ 皆さんそれぞれのユニークな世界を、動機を、心を、人生を、教育プログラムのなかで表現しながら、共有してください。皆さんそれぞれのアイディアを、ぜひ 広く共有してください。”

学生を対象として通常の毎週のクラスの形態のなかでコンテンツを創ったグループ、夏期集中講座のような短期集中プログラムを創ったグループ、平和維持活動に携わる実務家向けの研修、一般参加型のリーダーシップ研修を創ったグループ、プログラムの一部にシアターワークを組み込んだグループ等、それぞれがこれまでに見聞き、あるいは、実際に体験してきたものを系譜としながら、そこに新たなるアレンジが試みられていて、その世界は様々でした。また、そんななかで、独自の視点とアイディアを深めに深めたグループも登場。いつもとても控えめだったアジアルーツの学生たちの何人かが「The Bedroom Project」と題して、学校での深刻ないじめにより、日常を寝室のなかで過ごしている若者の声を伝えるという意図のもと、世界中へ移動可能なコンテナのなかに参加者体験型のフィジカルなアートインスタレーションを創り上げるというプロジェクトを設計して、プレゼンテーションを行いました。その発想とデザインセンスはもちろんですが、何よりも その教育プログラムのアイディアが、設計者=学生自身の人生や心の深い動機と結びついているのを確かに感じて、胸をつよく打たれました。パワーポイント内にはすでに、アートインスタレーションの一部となる、素晴らしいナレーションが収録されていました。彼・彼女たちの発表を目の当たりにして、あらためて、私たちの身体は(言葉を超えて)本当にたくさんのことを他者に伝えているのだということを、実感しました。彼らの存在感は、周到な準備にも裏付けされて堂々としたものでもありましたが、同時に、弱い立場にある者の視点をすくいとり慮るような大変に優しく慈悲的なものが現れていて、その身体=立ち姿から、大きなメッセージを受け取りました。

クラスは最終回でしたが、むしろ これから こうして生まれてきたアイディアを現実にしていく実際の創造のプロセスに入りたいな と 心から思いました。近い将来、長期間の新たなプロジェクトを立ち上げられますように、また進んでゆきたいと思っています。ひとまずは、素晴らしい春学期を、心より ありがとうございました。See you again, and have a good summer time !!

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関西大学人間健康学部准教授 小室弘毅さんコーディネートによる連続講座「生き方としてのマインドフルネス」にて、小木戸利光がシアターワークの講師として携わらせていただきます。全6回のプログラムの詳細は、以下の通りです。どうぞ よろしくお願いいたします。

堺市と関西大学との地域連携事業の一環で、標記の講座を開催いたします。

本講座では、マインドフルネスを単なる技法としてではなく、生き方の問題として捉えます。毎回、マインドフルな身心技法を体験することを通して、日常生活に活かすことのできるマインドフルネスについて考えていきます。仏教、アート、ソマティクス(ボディワーク)、ソマティック心理学(身体心理療法)という4つの領域から、それぞれ一流の講師をお招きして、理論とワークの両面から講座を担当していただきます。6回の連続講座で、マインドフルネスの真髄が、地層のように少しずつ参加される方の中に積み重なっていくことを願っております。

■日程 全6回連続講座 ※全日程参加を原則とさせていただきます

9月14日、10月19日、11月9日、12月7日、1月18日、1月25日

■時間 講座・実技 14:00~17:00

■場所 関西大学堺キャンパス

〒590-8515 堺市堺区香ヶ丘町1-11-1 南海高野線「浅香山駅」徒歩1分

■講師

小室 弘毅 (関西大学人間健康学部准教授) <9/14、1/25>

贄川 治樹(リズムセラピー研究所所長) <10/19>

稲川 依子(鍼灸師、「からもも」主宰) <11/9>

小木戸 利光(アーティスト、Theatre for Peace and Conflict Resolution 代表)<12/7>

藤田 一照(曹洞宗僧侶、磨塼寺住職) <1/18>

■対象 堺市民 定員35名

詳細・申し込み

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Spotify 配信スタート – Radio 小木戸利光「越境する身体」が、Spotifyで配信開始になりました。いつでもお好きな時間にお聴きいただくことができます。現在 全2回分の放送がアップロードされていて、最新回はイギリス・ロンドンからお届けしています 🍀
番組のテーマ曲は、アルバム未収録曲「Prelude」です。ぜひ お聴きください ♪ →https://anchor.fm/toshimitsukokido

 

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早稲田大学大学院 – 人種迫害が表現された演劇シーンのなかで、私たちの生の感情をつよく引き起こすようなドキリとした瞬間がありました。大学院では、想像以上に、本当に様々な人生経験をしてきた人たちとの出会いがあります。ある一瞬、ほんの一瞬の出来事でしたが、誰かの身体が=その人の実の人生の経験・記憶が、差別・迫害・殺りくというものと何かしらの形で深く繋がった瞬間を感じました。彼・彼女たちが、自分たちでつくったシーンのなかで、人物を演じることによって、実感とともに、他者の異なる立場・視点・感情にアクセスできた人がいたとしたら、理論と実践のその学びの質の違いについて皆で話し合い、その双方向から物事を洞察して行動できるとは、どのようなものなのか、シアターワークを通じて、探求しています。身体はあらゆることを物語っています。時に言葉以上に、核心を伝えてくれます。

社会科学を学び、論文を書いていく大学院生たちに、Theatre for Peace and Conflict Resolutionという実践・方法論を論理的に示しながら、身体で感得していく実践のシアターワークを共有しています。学問の場に、身体性を含ませること。わりきれない、切り捨てられない、はっきりと線をひいて理論化・言語化できない人の心・内的な声・個々の人生の物語をすべて含んだ「私たちの身体」を、学問のなかでも お互いに大事に扱いながら、私たち人間の生の全体性を回復してゆくことを目指しています。

とくに、今この時代には、個人あるいは組織の変容にも、身体性を含むということが、とても大事なことであるように思っています。

授業後、身体中から熱が出てきて、身体中があつくなって、熱がぬけていかない感じでしたので、寝る前に プールで 泳いで、泳いで、泳いで、泳ぎました。水に浮かびながら、泳ぐのは、本当に マインドフルになれます。

 

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Asian Studies Conference Japan 学会発表

平和学・和解学における教育実践としてのTheatre for Peace and Conflict Resolutionの取り組みについて、Asian Studies Conference Japan 2019にて「Introducing Performing Arts to Teaching Histories and Conflict Resolution in Asia: Pedagogical notes」と題して、発表いたします。共同発表者は、CAMPUS Asia ENGAGE(多層的紛争解決・社会変革のためのグローバルリーダー育成プログラム)にて、プロジェクトをご一緒させていただいております、前国連職員で現早稲田大学講師の小山淑子さん、早稲田大学 政治経済学術院の梅森直之教授、美術史がご専門の成城大学・荒木慎也先生です。→ Asia Studies Conference Japan

今年は、シアターワークの実践とその成果について、いくつかの学会や講演会にて、発表・お話をさせていただくことが決まっています。ご興味のある方は、ぜひ いらしてください。ともに、考え、話し合い、新たなる発見と創造の機会を生み出すことができましたら、たいへん嬉しく思います。実際のシアターワークを体験することにご興味のある方は、ワークショップ、講座、リトリートプログラムなどがありますので、公式サイトにて ぜひ チェックしてみてください。どこかで、皆さまとご一緒できますことを、心より 楽しみにしております。

小木戸 利光

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ARTQ INSTITUTE「心と身体の表現学」はじまりました。この日は、お天気がとても良く、午前中の光をいっぱいに浴びながら、風が優しく通っていくのを感じながら、鳥のさえずりに耳を澄ましながら、植物の緑の葉の呼吸とも調和するように、皆さまと 気持ちよく ボディワーク や 心臓の鼓動、全身の血流を感じるワーク、マインドフルネスの呼吸、心と身体を内観してゆくワークをいたしました 🍀

 

皆さまとの対話のなかでは「心と身体の呼吸・感情・記憶」について、それぞれの人生経験も共有しながら、ともに考え、心と身体がおのずと発している声に耳を澄ましてゆきました。

 

今後 定期的に開催していきますので、ご興味のある方は ぜひ。おひとりおひとりとゆっくり丁寧に進んでゆけるリトリートワークです→https://www.artq.institute/courses/list_courses.html?cat=心と身体の表現学コース-Deep+Mind+Touch

 

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早稲田大学大学院 国際コミュニケーション研究科 / Waseda University, Graduate School of International Culture and Communication Studies

 

2019年度は、早稲田大学にて、通年でシアターワークに基づいた授業を担当しています。春学期は早稲田大学大学院国際コミュニケーション研究科にて、秋学期は早稲田大学国際教養学部でのクラスです。

 

はたと、英国・ロンドンのグローブ座から → 日本・早稲田大学のグローブ座に移動していたことに、気がつきました。世界各地のTheatreを行き来しながら、演劇 そして 教育を通じて、演劇に携わる様々な実践家、研究者、学生さんたちと出会うことができています。皆さまとめぐり逢い、協同し、新たな学びが生まれていることを、心より 深く 感謝いたします。皆さま ありがとうございます

 

大学へ来て、一番に行うことは、教室の机・椅子を移動して、場に 心・身体を 自由に動かしてゆける空間を創ることです。

 

私のシアターワークは、科学と身体を結んでゆくことを、役割の一つとして与えられて、生まれてきたものであると実感しています。

 

来週からは、「心と身体の表現学」が始まります。シアターワークをじっくり深くお伝えするために創ったリトリートプログラムです。どなたでもご参加ができる一般向け講座です。https://www.artq.institute/courses/list_faculty.html?cat=心と身体の表現学科

 

 

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[ Contemplative Learning Network – 夏のリトリート ]

Theatre for Peace and Conflict Resolutionは、慶応義塾大学の井本由紀さんのマインドフルネス、手塚千鶴子さんの内観療法、シアターワークを融合した取り組みを行っています。優しく静寂に包まれた時のなかで、いまここへの気づきを高めながら、母親との関係を幼少期に遡って丁寧に観想し、コラージュという非言語の領域で、意識に上がったものをイメージ化し、シアターワークでは そのこころ・からだの声に寄り添いながら、表に現われてくるものを結晶化していきます。そして、それぞれが、それぞれの世界と触れ合いながら、自他への慈悲・調和的なあり方を探求してゆきます。

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からだ・こころ・いまに帰る真夏のマインドフルネス・リトリート

〜Contemplative Theatre: 内観・コラージュ・シアターワーク〜

身体と心の声に寄り添い、表現を通しての自己の受容と変容を導くリトリート・プログラムです。豊かな自然の中で、マインドフルネス、内観療法、コラージュ、ボディワーク、シアターワークを有機的に体験していきます。

日程:2019年8月10日(土)ー8月11日(日)

詳細は、こちらをご覧ください。→ Contemplative Learning Network

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ウィリアム・シェイクスピアの出生地・Stratford upon avonを訪れました。この町は、いかに時代が流れても、Shakespeareという舞台芸術とそれを愛する世界中の人たちによって、その心が守られていると感じます。おかげさまで、とても穏やかで平和な1日を過ごすことができました。

1500年代後半〜1600年代前半にかけて、シェイクスピアの手で 美しい詩が連なるようにして綴られている戯曲は、優れた俳優や演出家のもと、舞台上で その言葉が声・身体の蠢き・感情を伴って発語・表出される=身体化される時、たちまち その場を魔術化します。空白の舞台上に 歴史が立ち現れ、往時を生きた人間の心、そして、時代を超えた人間の普遍的な感情に、演者・観客ともに身体感覚で繋がってゆきます。(同時に、この現象は、そんなに簡単に起こるものではないとも感じています。劇場で 目を凝らし 耳を澄まし 感じ取りながら 観ていますが、それが起こっている時と、そうでない時があるように思います)。ここで、とても大事なのは、これは小説ではなく、戯曲であるということです。書き文字として完結しているのではなく、劇場でその詩や物語が身体化されることではじめて結実される芸術であるのです。このシェイクスピア演劇で生まれうる現象は、日本の能や神楽にも深く通ずるものではないでしょうか。口承や演者の身体そのもので脈々と受け継がれてきた物語、舞、音楽、鼓動・リズムは、舞台上で 演者によって身体化される=舞い・踊り・謡い・音が奏でられることではじめて、過去現在未来を貫く幽玄的な舞台が立ち現れて、演者・観客はおのずと、芸術空間という日常とは異なった深層意識が響き合うゾーンに入り、この命は無意識的なものと接続されていきます。これは、専門家が創り上げる芸術だけに起こることではありません。たとえば、シアターワークにおいて、皆さまが自分のある気持ちを一人称で綴ります。この心情が綴られた言葉たちが、ノート上の書き文字であることを超えて、あなたに声に出して朗読される時、または 身体表現・音楽・踊りとして表現される時=身体化される時、その心の声は身体と深く結びつき、心の奥底に沈んでいた感情が発露されたり、ワーク後に深い癒しがもたらされたり、心と身体が結びついて整ったと感じることがあります。

シェイクスピアの戯曲=言葉には、それらを身体化していく演者の身体そのものを開いて自由にしていく鍵が秘められています。僕が英国留学中に学んだのは、まさにこの、「声」や「身体性」を演劇という芸術空間のなかで立ち上げていく演劇的実践であり、僕のシアターワークの根っこの一つとなっています。そして、それは、心身の潜在性や深層の心の声や葛藤を解放させてくれる術を持ち合わせており、幼い頃から心身の著しい不調和で苦しんでいた僕自身にとっては、芸術表現とは、人の命を蘇生させてくれるものでもあるということを教えてくれました。

藤田一照さんが、野口体操やヨガのアーサナなどを例に挙げながら「勁道の通ったからだ」というお話をされていたことが、深く心に残っています。もっとお話を聞いて勉強したいと思っていますが、その日のお話を僕なりの解釈で言葉にしてみますと、叡智のもとに創りあげられ伝授されてきている身体的なワークのなかで、身体がうまくしかるべきポーズやポジションに入ると、有機的な生命力が出ずる身体として再接続されていくということです。僕自身、この人生のなかで、毎日、特に心と身体が困難にある時には、ヨガやTaichiなどのボディワークを行うことで、歌・音楽・身体表現などの芸術表現を行うことで、大きな癒しと力を与えられてきていて、心身が整えられてきていますので、一照さんのお話は、とても腑に落ちるものがありました。シェイクスピアの戯曲も、長い歳月をかけて受け継がれてきた叡智であり、その叡智にフィジカルにアクセスしていくことができるという意味で、すこしかたちこそ違いますが、同じく優れた身体的芸術的な仕掛けの一つとも言えるのではないでしょうか。俳優や演出家によって 戯曲を舞台上で身体化してゆくリハーサルのプロセスそのものが、演者の心と身体を解放して自由にし、他者と比べようのない、それぞれ特有の本来の声・身体の動きを生き生きと生み出していく可能性に満ちているという意味で、シェイクスピアの戯曲は、演者の心と身体を解放させる芸術的な装置としても機能しています。

Royal Shakespeare Companyのプラクティショナーは、シェイクスピアの戯曲の言葉の一つ一つを理解していくのはとても難しいけれど、最も大事なのは、それらを声に出して読んでみること、つまり、身体化してみることだと言っています。僕はシェイクスピア演劇を鑑賞する時は、その言葉を意味として理屈で理解していくのではなく、俳優というアーティストから発語される「音楽」として聴いていて受け取っています。言語の響きが美しく層をなしている音楽です。神道における祝詞なども、書き文字というよりは、音楽的な言霊として、それらが発語されていくことによって、一つの働きが生まれているのを感じます。

たとえば、これまで、どんな世界のなかでも、「もがいてなやんでくるしみぬいて見つけろ」とか「しにものぐるいでやってみろ」とか、ぎょっとするような恐ろしい言葉とともに、自分自身を追い込み、まるで歯をくいしばって血をはきながらがんばっていかなければならない気持ちになるような、そんなことが盛んに言われてきた節があるのではないでしょうか。それも一つの方法と選択肢としてあって良いと思いますし、その方法がぴったり合う人は良いのですが、僕自身は、身体が緊張し萎縮していくこの方法がまったく合わなかったのです。そこで、一つの提案として、僕がシアターワークで皆さまと共有させていただいているのは、表現手法を用いたファジカルなワークとともに、ありのままのご自身の心・身体の状態を優しく受け入れて認め、身体の怖れや緊張をほどいていき、強張ったものをほぐしゆるめていき、心と身体の動きたい方向へ、望んでいる方向へ、丁寧に優しく動かしてあげながら、本来の自分自身の心・身体に出会っていくというものです。心・身体が真にリラックスしている時こそ、その人本来の魅力が存分に溢れてくるというのが、シアターワークで最も大事にしている基本的な考えです。英国でも、そこに光を当てて、私たちの身体を開いて自由にしていくワークの専門家さんたちと交流・協同をしています。

Stratford upon avonでの午後は、バーミンガム大学のThe Shakespeare Instituteで博士号を取得し、現在はワォーリック大学で教鞭をとられているシェイクスピアの専門家で、俳優・演出家という実践家としてもご活躍されている方と面会しました。その場では、来たる将来に、私の「Theatre for Peace and Conflict Resolution」におけるマインドフルネスや内観などを取り入れた東洋的な間において浮かび上がるシアターワークの世界を共有すること、そして、私は さらに深く 英国の彼らの「Teaching Shakespeare」の世界を学ぶことを誓い、英国-日本という双方向から知識・技術・感性を共有し、協同していくための具体的な方法について話し合いました。インスピレーションをたくさん受けた、本当に素晴らしいAfternoon Tea の時間でした。

写真は、Royal Shakespeare theatre、シェイクスピアが眠っている Holy Trinity Churchにて。

小木戸 利光

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2002年 英国留学中、街ではあからさまな人種差別の言葉を受け、時には ストリートを歩いていて 突然殴りかかられることもあり、イギリスで起こるあらゆる現実を受け入れることができずに、全身に蕁麻疹が出て顔がゆがんで変わってしまった当時の僕には、まさか 18年後に その英国から この人生で こんなにも心底勇気づけられて力を与えられる日がくるとは想像もできませんでした。今は、この英国でのこれまでのあらゆる経験が、自分を育ててくれ、今の僕を創り上げてくれているかけがえのないものだとはっきり実感できて、感謝の気持ちが溢れてきています。そして、僕のシアターワークは、まさにその時代に僕が英国で学んできたことに決定的に支えられています。

今、そのイギリスは、EU離脱を巡る是非、メイ首相辞任で大きく揺れています。でも、あの頃のあの時代と比べると、英国は 驚くほどに 開かれて 安全で 居やすい国になっています。この国にいるだけで感じざるをえなかった疎外感はやってこないし、地下鉄で怖い思いをすることもほとんどなくなりました。アジアで生まれ育った僕は食べ物に困って困って仕方がなかったけれど、今では身近に本当に様々な食材や様々な国の多様な食事の選択肢があります。イギリスの「空気」は圧倒的に変わりました。一方で、世界の不均衡と軋轢から生じた悲しみと憎しみのテロ等が起こっていることも事実です。物事は複眼的に見れば、それぞれに様々な様相を呈しています。そのすべてが、それぞれの本当だと思います。Theatre for Peace and Conflict Resolutionは、演劇や表現を通じて、物事を多層的に見て感じて捉えていくための実践でもあります。

僕はこの先、いかなる選択がなされても、この英国が 閉じることなく 大きく開かれつづけて 多様で調和的な未来に向かっていくことを、心から願っています。

今そしてここからの未来で、僕は 新たに 英国と深く関わってゆきます。

Theatre for Peace and Conflict Resolution
小木戸 利光

 

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