Keio University Japan, Lecture & Workshop / 慶應義塾大学

慶應義塾大学 講義 / Keio University Japan, Lecture & Workshop

慶應義塾大学 文学部 社会学専攻 社会人類学 井本由紀研究会にて、3時間の講義&ワークショップを行いました。文化人類学を学び、フィールドワークを行い、エスノグラフィーを作成していく研究室の学生たち。僕のシアターワークでは、どこか遠くの異なる国・文化・言語・コミュニティー・国際情勢・政治的背景における人間観察を行う前に、まずは一人称の「私」の存在に丁寧に意識を向けて、心と身体を動かし起こしながら進んでいくフィジカルなシアターワークを通して、私自身についての気づきを高め、その心と身体の感覚・実感とともに、私=自分自身を確かめ、認識、理解していくことを、その大事な始まりとしています。そして、次に、目の前の他者=教室・職場・チームのメンバーの存在に心を向けていき、グループワークでのシアターワーク体験を通して、私たちそれぞれの多様性、そして、その関係性について学んでいきます。ここではないどこかではなく私たちのすぐ目の前、たとえば、同大学の同学部の同年齢の学生同士でも、職場の同僚でも、あるいは、友人や家族間でも、私たちにはそれぞれに特有の物事の感じ方、捉え方、理解の方法があり、その感性、思考、道徳観、価値観、アイデンティティ、人間性は本当にユニークに異なっています。私自身、目の前の他者、その環境という、「今ここに在ること」を学んでゆくことこそが、その向こうにある未知なる世界を学ぶことにも繋がってゆくのだと考えています。こうしたシアターワークの基本の考えのもと、講義では、まずは 私=僕自身のこれまでの人生や仕事について紹介していきました。「声なき声に耳を澄ます」。俳優、アーティスト、シアターワークの実践家としてのあらゆる仕事に通底しているテーマの一つである、このキーワードから学生の皆さんとの対話を始めて、戦争や差別、難民問題に関する番組や作品におおく携わってきた僕のこれまでの仕事のあり方、そこに込めてきた思いなどをお話していきました。被爆地・長崎での仕事における出会い・経験について、残留日本人と呼ばれる皆さまにお会いしにいったロシア・サハリンの旅についてなど、その写真記録とともに、皆さんと共有しました。

研究会の皆さまは、事前に、生まれながらに視覚を持たない加藤秀幸さんが映画をつくるプロセスを描いたドキュメンタリー映画「ナイトクルージング」を劇場で観てくださっていて、こちらの加藤秀幸監督映画「ゴースト ヴィジョン」で 俳優として全盲の主人公を演じる機会に恵まれました僕自身のこの映画における加藤さんとの出会い・協働についてもお話させていただきました。

今回授業では「ナイトクルージング」が取り上げられたこともあり、後半のワークショップでは、シアターワークにも通ずる、視覚を覆ったうえで 他の身体の無数の感覚を起こして それらを存分に使いながら 自分自身や他者を新たに感じ取り、捉えていくワークを2種類共有しました。

大半が就職活動中、あるいは、それを控えた慶應義塾大学の3年生・4年生。心と身体が緊張状態にある人もおおいと感じましたので、今後も 僕にできるかたちで 皆さんを応援し続け、ともに励まし合っていきたいと思いをつよくしながら、帰路につきました。皆さま、かけがえのないお時間をご一緒できましたことを、心から 嬉しく 光栄に 思っています。心より ありがとうございました。

 

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