United Kingdom / 英国

2002年 英国留学中、街ではあからさまな人種差別の言葉を受け、時には ストリートを歩いていて 突然殴りかかられることもあり、イギリスで起こるあらゆる現実を受け入れることができずに、全身に蕁麻疹が出て顔がゆがんで変わってしまった当時の僕には、まさか 18年後に その英国から この人生で こんなにも心底勇気づけられて力を与えられる日がくるとは想像もできませんでした。今は、この英国でのこれまでのあらゆる経験が、自分を育ててくれ、今の僕を創り上げてくれているかけがえのないものだとはっきり実感できて、感謝の気持ちが溢れてきています。そして、僕のシアターワークは、まさにその時代に僕が英国で学んできたことに決定的に支えられています。

今、そのイギリスは、EU離脱を巡る是非、メイ首相辞任で大きく揺れています。でも、あの頃のあの時代と比べると、英国は 驚くほどに 開かれて 安全で 居やすい国になっています。この国にいるだけで感じざるをえなかった疎外感はやってこないし、地下鉄で怖い思いをすることもほとんどなくなりました。アジアで生まれ育った僕は食べ物に困って困って仕方がなかったけれど、今では身近に本当に様々な食材や様々な国の多様な食事の選択肢があります。イギリスの「空気」は圧倒的に変わりました。一方で、世界の不均衡と軋轢から生じた悲しみと憎しみのテロ等が起こっていることも事実です。物事は複眼的に見れば、それぞれに様々な様相を呈しています。そのすべてが、それぞれの本当だと思います。Theatre for Peace and Conflict Resolutionは、演劇や表現を通じて、物事を多層的に見て感じて捉えていくための実践でもあります。

僕はこの先、いかなる選択がなされても、この英国が 閉じることなく 大きく開かれつづけて 多様で調和的な未来に向かっていくことを、心から願っています。

今そしてここからの未来で、僕は 新たに 英国と深く関わってゆきます。

Theatre for Peace and Conflict Resolution
小木戸 利光

 

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